■オススメ度
◎
です。
☆: 是非とも劇場へ。傑作
◎: できれば大画面で
○: 映画ファンなら見る価値あり
■感想
役者たちの芝居も脚本も実に丁寧で、原作の持つ得体の知れない不安感を残しつつも、やさしさを感じることができる、非常に上質なエンターテイメント映画でした。
大画面で見る必要は薄いかもしれませんが、CMでぶつ切りされない環境で見たい映画です。
この映画を見たかった理由は主に2つありました。1つは事件の始まりの舞台が西宮であったこと。かつて甲子園球場の隣りにあった阪神
パークも重要なヒントとして出てきます。
もう1つは脚本が野木亜紀子氏であること。TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』『MIU404』『アンナチュラル』などの脚本を手掛けた人です。特に『アンナチュラル』で主人公に語らせたセリフは凄かった。
”あなたが死んで何になるの?”
”あなたを苦しめた人は、転校して、名前を変えて、新しい人生を生きていくの。あなたの人生を奪ったことなんてすっかり忘れて生きていくの。”
”あなたが命を差し出しても、あなたの痛みは決して彼らに届かない”
生きろとか、死んじゃだめだ、とかのありきたりな言葉ではなく、斧で森の木をなぎ払うようなセリフ。なんじゃこりゃ!と思ったのが氏を知るきっかけでした。
彼女がヒット作の原作をどう料理するかを見たかったのです。
テープに声を吹き込んだテーラーを星野源、記者を小栗旬が演じています。
瀬戸大橋のたもとで2人が一休みするシーンは映画オリジナル。印象に残る名場面になってます。車の中での会話もいいですよね。
2人の演技も、もちろん評価されるべきものですが、脇役陣が皆すばらしい。
事件に多少なりとも関わり、30年を過ごしてきた様々な人々の姿。誰にも言えない葛藤を抱た者、思い出のように語る者。ワンシーンだけの登場でも様々な人間が生きてきたことがわかります(10代俳優の演技にも注目)。
元過激派たちは警察や企業に対する義憤から犯罪行為に「奮い立った」と語ります。でも彼らの目には毎日を生きている人の姿が映っていません。
国だって社会だって弱い人間たちが支えています。攻撃している相手が、もしかしたら自分たちよりも弱い立場の人間かもしれないとは気づかない。ちょっとだけでも身近な人がどうなるかという想像力があれば事件は、起こらなかったかもしれません。
そう、子供たちの未来は変わっていたはずです。
都度違うスーツを着こなす星野の店に、オーダースーツを作りたいと小栗が現れるラストシーン。「お待ちしていまいした」と応じる星野。この2人はもう同志なのだと感じる良い終わり方でした。
主題歌はいらんかったな。
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