あまりかぜです。
バラク・オバマ大統領が愛読したという事でも話題になった一冊。
中国でも出版されるや大ベストセラーとのこと。10年を経てようやく邦訳されました。
とんでもなく面白いです。
中国のSFという先入観を持って読んではいけません。
400ページを超える作品なのでじっくり読もうと思っていたのですが、読み始めて気がつくと、半分近くまで読んでしまい、慌てました。
(あらすじ)
物理学者である葉文潔の父親は、文化大革命によって糾弾され殺害されてしまう。
後年、天文学者となった彼女は軍の閉鎖基地へと送られ、そこで人類の存亡に関わる決断をする。
もう一人の主人公、汪淼は自分だけに謎のカウントダウンが見え始め、VRゲーム『三体』に解決のヒントがあると思い没入していく。ゲームの目的とは一体なんなのか。
…
『三体』ゲームは、架空の三体人となって彼らの歴史を体感していくというもの。少しでも天体の知識があれば三体問題が背景にあるのはわかりそうなもの。汪淼がそれに気づくのがちと遅い気がします。
その汪淼のミステリーになると俄然話は面白くなっていき、あれよあれよと進んでいきます。
そして、キーパーソンたる葉文潔。彼女の決断には、はっきり言って驚きました。
いかに高い知性や理系な人間であろうとも、人々にとって正しい判断を下すとは限りません。行動原理はいつも感情である、ということなのでしょうか(そういえぱルーピーは東大卒、バ菅は東工大卒でした)。
戦争がなぜ起こるかと問われ、その原因は感情だ、という誰ぞの説を思い出しました。リアルに描かれる近現代中国での経験が彼女のメッセージに集約されています。
彼女の秘密に話が移っていくと、その後は怒涛のSFエンターテインメントが展開していきます。驀進するストーリーに最先端の科学技術がこれでもかとてんこ盛りなのに全然しつこくない。邦訳が上手いのか、もとからなんでしょうか。
もうひとつ、見過ごせないのは、非常に強大な思想=宗教が誕生する瞬間を描いてるというところです。妙に納得してしまいました。この宗教がこれからどうなるのかも注目です。
これほどの本格SFが中国で書かれたという現実。刮目しないといけませんね。
来年以降に邦訳される予定の第二部、三部が楽しみでなりません!
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