■オススメ度
◯
です。
☆: 是非とも劇場へ。傑作
◎: できれば大画面で
○: 映画ファンなら見る価値あり
■感想
見る者の年齢や社会的立場なんかで、全く印象が異なるであろう作品です。
おそらく若い人が見れば将来が見えず悲観的と感じるでしょう。しかし人生後半を過ぎた人が見れば、こんなところにも希望が有ると思うかもしれません。
最愛の夫、夫が愛した仕事も町さえ無くした初老の女が車上での放浪生活を始めます。映画が切り取る彼女のノマド生活は実にリアル。
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基本、悪い人間は出てきません。出会うノマドたちはほぼ高齢者。みな何かを抱え様々な理由でてノマドとなってます。そのきっかけの多くが家族。旅立つ原因も、戻っていく先も家族なのです。
彼らを見て、「お前はどう感じるか」という問いを映画は突きつけます。
仕事漬けで時間に追われる生活はゴメンだというのは実にもよくわかります。でもこの日本で、大自然を感じるだけでテクノロジーの享受なしに暮らすのもまっぴらです。
だからもやもやしてしまう。手放しに大絶賛はできません。
主人公ファーンは誘われても定住せず、旅を続ける選択をします。岩場で1人きりになったり、荒れる早朝の海を見つめる彼女ならそうするだろうと、想像はできます。決して孤独が好きだからじゃない。愛するものがなくなった自分が存在するのにふさわしい場所がここではない、と感じたからでしょう。
あるいは、いつか自殺した息子に会える気がするというコミュニティー主催者の話が腑に落ちのかもしれません。いつか会える、会わなくていいと思える日まで彼女は旅するのです。
主人公のファーンにフランシス・マクドーマンド。『スリー・ビルボード』で見事な演技を見せたオスカー女優です。
彼女の存在なくしてこの映画のリアリティはなかったでしょう。オスカーの最有力ってのはウソじゃありませんでした。
↓クロエ・ジャオ監督の前作。こちらも高評価の作品です。
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