■オススメ度
☆
です。
☆: 是非とも劇場へ。傑作
◎: できれば大画面で
○: 映画ファンなら見る価値あり
■感想
監督はデイミアン・チャゼル。『セッション』『ラ・ラ・ランド』を見てわかるとおり自分で書き、音楽が絡んだ作品は抜群に面白い。
バビロンとは「ヨハネの黙示録」において支配者たちが贅沢や欲望などの邪悪を撒き散らす罪深き場所とされ、最後は神の怒りによって破壊されます。
舞台はサイレントの末期。スターやスタジオ(まだセットと呼ばれている)らのバビロンはやがてイノベーションと大衆という神々によって終焉を迎えます。
主な主人公はサイレントの大スター、映画界に憧れる男、女優志望、黒人トランペッターの4人。
100年前の映画の世界で、ときに彼らが出会い別れ、狂気に翻弄されていきます。
むせ返るような喧騒。西部開拓時代のような何でもありの撮影と夜毎のパーティー。
華やかな世界の闇でうごめくギャングたち。さすがにこれはTVでは見せられませんね。
非常に興味深いと思ったのが黒人のトランペッターの存在です。
なぜ彼を登場させたのでしょうか。もちろんトーキーの普及にジャズ演奏が一役買ったという事実はあるでしょうが、彼なしでも映画は成り立ちます。
おそらく、バビロンという異常な世界にもまともな精神を持つ人間がいた事を示したかったのでしょう。その役目にジャズ奏者を持ってくるのはチャゼルならではのセンスです。
ギャングに追われた女に、男が愛してると求婚する様は、サイレントスターが観客に笑われるセリフそのままです。スクリーンに投影されてると途端に陳腐に感じてしまうリアル。映画の恐ろしさもわかるシーンです。
時を経てLAに戻った男は街で映画を見ます。それは自分たちが過ごした時代を描いた『雨に唄えば』。
そして映画は現代までの100年に作られてきた作品を走馬灯の如く映し出していきます。
実に印象的で、ここだけ何回でも見たくなるモンタージュですが、話そのものとは関係なく、考えるとわけがわからない。
多分このシーンだけは主人公は観客です。われわれ映画好きは未だバビロンの住民なんだと伝えたいのでしょう。
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